私たちについて
ABOUT US
空き家になってしまいそうだった一軒の古民家と、庭に残る檸檬畑。この場所で営まれてきた暮らしの価値を絶やさず、次の人が受け取れる宿としてひらいています。
宿が生まれるまで
運営
大切にしていること
会社概要
空き家になってしまう可能性のあった一軒の家から、物語が始まった。
始まりは、この地域で訪問介護をしている知人から届いた一本の連絡でした。「一人暮らしの家主がホームへ入居することになり、このままでは空き家になってしまう家を引き取ってくれる人を探している」たまたまメンバーが島にいたこともあり、その日のうちに内覧へ向かいました。そこにあったのは、50坪ほどの平屋と、背後に広がる130坪ほどの農地。長く人の手が入らなかった畑は木々と草に覆われていましたが、防風林を抜けた先には瀬戸内海の穏やかな水面が広がっていました。商店もなく、尾道に暮らす人でも訪れる機会の少ない高根島。その静けさの中に、檸檬を育て、海とともに生きてきた時間が確かに残っていました。
果樹畑と瀬戸内海を目の前に、長い年月、暮らしが重ねられてきたこの場所。その価値を絶やさず、この先へつないでいくことはできないか。何を始めるかも決まっていませんでしたが、私たちはその場で「私たちにさせてください」と答えました。建物だけを新しくするのではなく、この家に残る気配や、畑を育んできた風土まで受け取れる場所にしたい。その思いが、farm and bed SETODAの最初の一歩になりました。この家を引き継ぐというあの時の決断から、島の暮らしを未来へ繋ぐ物語が動き始めました。
農的な暮らしの、いちばん豊かなところを。
この家を目の前にして脳裏に浮かんだのは、高根島で営まれてきた檸檬農家の暮らしでした。陽が昇れば畑へ出て、日が沈む前には家へ戻る。海が穏やかな日は空を仰ぎ、荒れる日には天候の行方を気にかける。少しずつ育つ実りを待ち、仕事の合間に身体を休め、天気のよい日は釣り糸を垂らし、収穫の日には仲間と火を囲んでいたかもしれません。自然の変化を受け取りながら、その日にできることを選び、一日の歩調を整えていく。そんな農的な暮らしには、自分たちの都合や効率を優先しがちな今、あらためて目を向けたい豊かさがあると感じました。
だからこそ、この宿では、かつての暮らしをそのまま再現するのではなく、そこに流れていた自然との距離感や時間の感覚を、今を生きる人が心地よく受け取れる形にしたいと考えました。まず、鬱蒼としていた畑をメンバー総出で伐採し、光と風が通る環境を取り戻しました。元は畑に面していた三つの個室を、長い時間を過ごすリビングと浴室へ変更。窓の向こうに檸檬の木々が見え、その奥に海の気配を感じられる構成にしています。古い家の記憶を消すのではなく、素材や間取りに残る暮らしの余韻を受け継ぎながら、農的な暮らしのよさが静かに立ち上がるよう整えました。
高根の暮らしを、 この先へつないでいく。
宿を美しく整えることだけが目的ではありません。檸檬畑、海、古民家に残る時間、人の手で育まれてきた風土。訪れる方々がご自身の感覚でその気配や背景を辿ることができるように整えています。なぜこの島に柑橘畑が広がっているのか。窓の外の風景は誰の手とどんな時を経て今の姿になったのか。その理由へ意識が向かうことで、高根の暮らしは観光のための景色ではなく、今も続く営みとして感じられると考えています。
島のリズムに、 自分たちを合わせる。
高根島では、風や海、季節の移ろいに合わせて、暮らしの歩調を整えていきます。風が強い日もあれば、海が荒れる日もある。花が咲き、実が育ち、収穫を迎える時期も、毎年まったく同じではありません。その変化を受け入れながら、その日にできることを選び、自分たちの歩調を土地に合わせていく。そんな暮らしが、この島では続いてきました。約400人が暮らす小さな島では、人との関わりもまた暮らしの一部です。誰かの手を借り、ときには自分が誰かの力になり、自然と「ありがとう」が行き交っていく。farm and bed SETODAで届けたいのは、きれいに整えられた島の一側面だけではありません。風土と溶け合い、人と支え合いながら生きていく。この土地に根ざした暮らしの感覚まで、滞在のなかで少しでも感じていただけたらと考えています。
この土地にあるものから、 空間をつくる。
瀬戸内海の牡蠣殻を利用した「瀬戸漆喰」を採用し、もともとの壁などの解体時に出てきた土を練り込むことで、この土地を表現する唯一無二の漆喰に仕上げました。さらに、造船の過程で残る鉄板を壁や畑の柵へ。黒柿の扉や薪ストーブの壁石も、組み合わせを考えながら自分たちでつくりました。新しさを足すより、この土地にある素材の記憶を生かすこと。空間を均一に仕上げるのではなく、手仕事の揺らぎや、かつての家の輪郭が残る余白を大切にしています。
宿の中だけで終わらない、 島との出会いをひらく。
海へ漕ぎ出すシーカヤックや、橋と島々を巡る電動自転車。宿にこもる心地よさと同じくらい、島の風土を身体で受け取る時間を大切にしています。海面の光、浜の砂、橋を渡る風、畑へ続く坂道。身体を動かして島を辿ると、室内から眺めていた風景が、人の営みが続く景色として少しずつ見えてきます。名所をいくつも巡ることよりも、ひとつの風景の奥にある暮らしへ近づいていくこと。島を身体で辿ったあと、窓の外の海や畑が、来たときとは少し違って見えていたなら。私たちがひらきたいのは、そんな高根島との出会いです。
Takeshi Matsumura
株式会社めじ代表。山口県出身、尾道在住。めじ結成を機に尾道へ移住し、すっかり気に入る。farm and bed SETODAではサイクリングやシーカヤックの案内人も務めています。
Kouki Yamane
尾道を知り尽くす、生粋の尾道人。飲食や宿泊を通じ、長年にわたり尾道のまちづくりを実践。地域で商いを続ける視点から宿を支えています。
Keiji Yamamoto
大阪府出身。全国の地域資源を生かす事業と人材育成に取り組むプロデューサー。地域と事業が続く仕組みを設計しています。訪れるたびに深く共鳴し、最も心が落ち着く尾道・瀬戸内の未来を共に創るため参画。
Tomomi Honma
新潟県出身。尾道の匂い・音・空気に惹かれて尾道へ移住。建築・アートの両面から、見過ごされてきた土地の素材に光を当て、地域の可能性を形にしています。
Miho Amachika
尾道の景色や人に魅了され、東京から瀬戸田・生口島へ移住。farm and bed SETODAの現場を担い、世界中からこの場所へ訪れる人たちと島の日常を繋いでいます。
会社名 株式会社めじ
代表 代表取締役 松村 健志
創業 2023年5月24日
所在地 〒722-0045 広島県尾道市久保2-17-2 SIMA SALON